部分群の存在の必要十分条件

まえがき

群論では、ある部分集合が部分群であることを示す場面が頻繁に現れる。部分群の定義を毎回そのまま用いると、複数の条件を個別に確認しなければならず、証明が冗長になりやすい。そのため、実際には

a,bHab1Ha,b\in H \Longrightarrow ab^{-1}\in H

という一つの条件だけを用いる部分群の判定法が広く利用される。本記事では、この条件が部分群であることの必要十分条件となる理由を、定義から順に証明する。

部分群の定義

GG を群とし、HGH\subseteq G とする。HHGG の部分群であるとは、HHGG と同じ演算について群となることである。結合法則は親群 GG から自動的に受け継がれるため、確認すべき条件は、単位元が含まれること、積について閉じていること、逆元について閉じていることの三つだけである。

部分群の判定法

次の定理は、部分群を判定する際に最もよく用いられる。

定理 群 GG の空でない部分集合 HH に対し、次は同値である。

  1. HHGG の部分群である。
  2. 任意の a,bHa,b\in H に対して
ab1Hab^{-1}\in H

が成り立つ。

すなわち、単位元・積・逆元を個別に確認する代わりに、この一つの条件だけを調べれば十分である。(mathlandscape.com)

必要性

HH が部分群であると仮定する。部分群は逆元について閉じているため、bHb\in H ならば b1Hb^{-1}\in H である。また積についても閉じているので、a,b1Ha,b^{-1}\in H から

ab1Hab^{-1}\in H

が従う。したがって、部分群ならば判定条件は必ず成立する。

十分性

逆に、任意の a,bHa,b\in H に対して

ab1Hab^{-1}\in H

が成り立つと仮定する。この一つの条件から部分群の三条件を導く。

まず a=ba=b とすると

aa1=eaa^{-1}=e

より、単位元 eeHH に含まれる。次に e,aHe,a\in H に判定条件を適用すると

ea1=a1Hea^{-1}=a^{-1}\in H

となるため、逆元について閉じていることが分かる。さらに b1Hb^{-1}\in H を用いて再び判定条件を適用すると

a(b1)1=abHa(b^{-1})^{-1}=ab\in H

となり、積についても閉じていることが従う。以上より、部分群の定義を満たすので HH は部分群である。

なぜ ab1ab^{-1} なのか

この判定法が成り立つ理由は、一つの条件から群の構造全体を復元できることにある。a=ba=b とすれば単位元が得られ、単位元が得られると逆元が導かれ、逆元が得られると積について閉じていることも導ける。このように、

ab1ab^{-1}

という一つの式だけで、部分群の定義に必要な三条件を順番に証明できるため、部分群判定法は必要十分条件となるのである。

整数の加法群 (Z,+)(\mathbb Z,+) において、偶数全体 2Z2\mathbb Z が部分群であることを示す。加法群では積は加法、逆元は負元であるから、判定条件は

ab2Za-b\in2\mathbb Z

となる。偶数同士の差は再び偶数であるため、この条件は成立する。したがって

2ZZ2\mathbb Z\le\mathbb Z

である。単位元や逆元を個別に確認する必要はなく、判定条件だけで証明が完結する。(mathlandscape.com)

まとめ

部分群を定義から確認すると、単位元・積・逆元の三条件をそれぞれ証明しなければならない。一方、空でない部分集合 HH に対して

a,bHab1Ha,b\in H\Longrightarrow ab^{-1}\in H

が成り立つならば、単位元、逆元、積について閉じていることを順に導けるため、この一つの条件だけで部分群であることが証明できる。これが部分群判定法が群論で広く用いられる理由である。